リスク・合併症について
リスク・合併症について

睡眠時無呼吸症候群は、単に「いびきを引き起こす病気」ではありません。夜間に繰り返し無呼吸状態に陥ることで、生活習慣病や精神疾患などを合併するリスクをはらみます。
睡眠時無呼吸症候群に気づけずに長く放置しているほどリスクは高くなりますので、たかがいびきと甘く見ず、早期受診・早期治療が必要です。日中の活動への悪影響と合わせて、ご紹介します。
SASは、睡眠の質を低下させるだけでなく、日中のパフォーマンスや安全にも様々なリスクをもたらします。
居眠り
SASの患者様は、睡眠中に何度も呼吸が止まるため、深い睡眠をとることができません。質の高い睡眠が得られないため、日中に強い眠気を感じ、居眠りをしてしまうリスクが高まります。会議中や授業中など、重要な場面でついウトウト…なんてことになるという声もよく聞きます。
集中力の低下
睡眠不足は、集中力や注意力を低下させる大きな要因となります。SASの人は、仕事や勉強中に集中することが難しく、ミスが増えたり、能率が落ちたりする可能性があります。「最近、ケアレスミスが多い」「なかなか仕事に集中できない」と感じている方は、SASの可能性も考えてみましょう。
仕事や学習への影響
日中の眠気や集中力低下は、仕事や学習に大きな影響を与えます。重要な会議中に居眠りをしてしまったり、試験で本来の実力を発揮できなかったりする可能性も考えられます。また、仕事のパフォーマンスが低下することで、評価が下がってしまうことも懸念されます。
交通事故
居眠り運転は、重大な交通事故につながる非常に危険な行為です。SASの人は、運転中に居眠りをしてしまうリスクが高いため、特に注意が必要です。「ちょっとだけなら…」という油断が、取り返しのつかない事故につながる可能性もあります。
労働災害
仕事中の居眠りや集中力低下は、労働災害のリスクを高めます。機械の操作ミスや高所からの転落など、思わぬ事故につながる可能性があります。SASは、自分だけでなく、周りの人にも危険を及ぼす可能性があることを認識しておく必要があります。
精神疾患をもっている人は睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクが、そうでない方と比べて優位に高いというデータがあります。
統合失調症やうつ病の人が睡眠時無呼吸症候群の有病率が約40%であったことと比べて、そうでない方の有病率が6.2%であったという報告や、海外のデータでうつ病と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人で睡眠時無呼吸症候群を合併している確率が優位に高かったという報告もあります。
また国内の睡眠時無呼吸症候群の患者における精神疾患の有病率は27%であり、全人口の精神疾患の有病率10%と比較して2.7倍と高いことが報告されています。
ではなぜ上記のようなことが起こるのでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群のリスク因子としては、高血圧や糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病があることが知られています。
また精神疾患にかかっている人は生活習慣病にかかりやすいことが知られております。すなわち精神疾患にかかっている人は生活習慣病になりやすいため、精神疾患は睡眠時無呼吸症候群のリスク因子をもっている可能性が高いため睡眠時無呼吸症候群を合併しやすいということです。
また他の原因としては精神疾患の治療薬による影響も考えられます。
例えば抗精神病薬の副作用としての代謝異常や体重増加や、睡眠薬や抗不安薬などのベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬剤による筋弛緩作用によって気道が狭くなることも原因として考えられます。
上記のような原因で精神疾患をもっている人は睡眠時無呼吸症候群にかかる危険性が高いと言えるでしょう。
当院では、睡眠時無呼吸症候群の治療にはCPAPを使用しています。
具体的には寝ているときに鼻にマスクを装着し、空気を送り込んで気道の閉塞を防ぐことにより、睡眠時無呼吸を予防する治療法です。
様々な研究の結果から、精神疾患にかかっており睡眠時無呼吸症候群を合併している方に睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療を実施することで精神症状の改善を認めたという報告がされています。
例えば難治性のうつ病として治療されていた方がCPAP治療をしたことでうつ症状の改善を認めた例1)や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者に対し治療を行ったことで悪夢などPTSDの症状が改善したというデータ2)もあります。
またCPAPによる治療によって症状が改善することで薬の量を減らせるという結果も出ており、睡眠時無呼吸症候群の治療により減薬も可能になると考えられています。
上記の理由から精神疾患の治療を実施するうえでいびきの有無や日中の眠気などの睡眠時無呼吸症候群に関連する症状の聴取をすること、また必要に応じて検査を行っていくことは非常に重要であると考えられる。加えて睡眠時無呼吸症候群の治療を実施することで精神症状の改善や減薬にもつながることが期待できると考えられます。
1) 内村 直尚, 土生川 光成 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と精神疾患―SASとうつ病との関係―精神経誌. 110 (2): 94-98, 2008
2)The Impact of Posttraumatic Stress Disorder on CPAP Adherence in Patients with Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2012 Dec 15;8(6):667–672. doi: 10.5664/jcsm.2260
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